カメラの設定を決める

前回はカメラの基礎知識として、最低限覚えなくちゃいけない「露出」「絞り」「シャッタースピード」「ISO感度」「ホワイトバランス」について説明したわけだが、理解していただけただろうか?

そんな基礎の基礎最初から知ってるよ!…て人も多いと思うが、それらを意図的に使いこなしている人は意外にも少ないと思う。デジイチ(ハイエンドコンデジ)を持ちながら、プログラムモード(全自動)を使用してしまっている人は多いのではないだろうか?それではデジイチの魅力も半減だ。

本日は、前回の基礎知識を元にどうやって設定を組み立てていけば、求めている写真を生み出すことが出来るか?の基本構成を考えていきたいと思う。



【ボケ味から設定を決める】

アナタは今、旅先でまさに目の前の恋人を撮影しようとしていると仮定しよう。あなたはその恋人の写真をどのように仕上げたいだろうか?

もし恋人がキレイに写っていれば、背景なんて関係ない…というならば、思い切って絞りを開放側に大きく開いてしまおう。そうすることで、背景が大きくボケ、被写体(恋人)が一層際立った写真に仕上がるだろう。


【背景にいる人をボカシて飛ばすことで被写体を際立たせる】


背景の美しい街並みに立つ恋人…というシーンを撮したいと考えているとするならば、思い切って絞りを可能なかぎり絞っていこう。そうすることで街並みの細部まで映り込んだ(レンズや状況によります)町と一体感のある写真に仕上がるだろう。


【背景の観客がハッキリと写りこみすぎてしまい、残念な写真になった】


街並みがもしもゴチャゴチャとしているなら、絞りを開放側に少し開いてあげよう。何段階か開放させながら撮影していけば、あなたの求める絶妙なボケ味の写真が撮影できるはず。


【シャチの演技で観客が笑顔になっている情景を納める。あくまでメインはシャチ】


絞りが決まってしまえば、後は適正露出(最適な明るさ)にするためシャッター速度を調節する。カメラの露出計を見ながら撮影し、仕上がりを液晶で確認して、仕上がりが暗ければシャッタースピードを遅く。明るすぎればシャッタースピードを早くすれば、何度か撮影しているうちに適正露出が得られるだろう。

さらに、もしボケ味から導き出した撮影スピードが遅すぎて手ぶれしてしまうようであれば、ISOを少し上げてやればシャッタースピードを早くしても適正露出に収めることが出来る。


どうだろう?解ってもらえたかな?


マニュアルで設定を決められるカメラと、ほぼ全自動のカメラとの一番の違いは、やはりボケ味をコントロールできるところに尽きると思う。

同じ被写体を同じアングルで撮る場合でも、背景にゴチャゴチャと色々なものが入っていると、被写体に目がいかず、テーマがぼやけてしまう。このゴチャゴチャした背景をボカシてやると、被写体が際立ち、仕上がりに格段の差が生まれるのだ。

まず自分の仕上げたいボケ味を決め、そこから逆算して適正露出を求めていけば、自然と設定は決まる。デジカメは仕上がりを見ながら設定を変えていけばいいんだから、簡単だろ?






シャッタースピードから設定を決める】

通常の撮影ではボケ味から設定を決めていけばイイが、時にはスピードの方が優先されるケースもある。例えば動きのある被写体を撮影する場合、暗すぎて手ブレしてしまうほどシャッタースピードを遅くしなくてはいけばい場合などだ。


たとえばスポーツを撮影することを考えてみよう。素早い動き、先の読めない動きを撮影しなくてはならないスポーツ撮影は本当に難しいもの。色々な撮影手法があるが、被写体ブレ(被写体の動きについていけずに、ブレてしまうこと)を防ぐため、シャッタースピードは速く設定する事が基本となる。


【速い動きの被写体をカッチリ捉えたいなら、何よりもまずシャッタースピードを優先】


人間が走りまわって動くようなスポーツなら1/500くらいのスピードで良いだろう。野球のボールやバットのスイングはもっと速いので、ピタっと動きを止めたいならシャッタースピードも更に速くする必要がある。必然的にこのシャッタースピードを中心に設定が決まる。明るすぎる場合は絞りを絞って(あまり多くはないのですが)暗すぎる場合は、必然的に絞りは開放に近づく。


【動きの素早い動物も必然的に速いシャッタースピードで】


スポーツの場合、被写体は動いている主役が中心になることが多いので開放に近い絞りで問題ないが、例えば大自然の中でするスポーツなどで、背景もステキに撮したい…なんて思ったなら、極力絞ろう。明るさが足りなければ、ISOを高く設定することも検討すればいい。


【山並みの上を飛んでいる…的な視覚効果が欲しいので、極力絞り込んで撮影】


ライブハウスなど、暗い場所で撮影したい場合、必然的にほとんどマックスに近い所まで絞りを開放していると思うが、それでもシャッタースピードは十分でないことのほうが多い、そういう場合は迷わずISOをガシガシ上げていこう。


※ 追記:
ライブハウスのケースはシャッタースピードから決めるのだが、本文では絞りから決めているように読めてしまうね。失礼。レンズによって手ぶれせずに撮影できる限界の目安というものが違う。広角レンズほど手ぶれしにくく、ズームレンズほど手ぶれしやすい。目安として「1/焦点距離」を考えるのが良いと一般的に言われている。例えば明るい単焦点標準レンズ50mm F1.4などで撮影する場合、1/50で撮影すればイイ(1/60で撮影すれば尚手ぶれしにくい)。ということは1/50で適正露出になるよう絞りを開放してやるわけだが、最大のF1.4でも暗すぎるケースでは、ノイズの発生を気にせずISOを必要十分になるまで上げてあげれば良いということ。



さて、二つのポイントから設定を決める考え方を考察したが理解していただけたかな?

良い写真の絶対条件(極めて特殊なケースを除く)は被写体とピントがあっていること、手ぶれや被写体ブレせず、暗すぎたり明るすぎたりしないことだ。どれだけ良い構図で、ステキなボケ味で撮影していたとしても前述の要件を満たしていなければ、全くもって意味が無い。まずはどう撮りたいか?を考えた上で、要件を満たすように一つ一つ設定を潰していこう。

時には妥協を強いられることもあるが、それこそが写真撮影だ。限られた条件の中から、最適な設定を導き出し、あっと驚く構図テーマで撮る。これこそがカメラの楽しみなんだぜ!



【まとめ】
設定順序は「絞り > シャッタースピード >ISO」 or 「シャッタースピード > 絞り > ISO」のどちらかになる。ISOの調節は最終手段と考えておけばイイ。